ギターの指板の材質。ローズウッド、メイプル、エボニーの違いと特徴
前回、ギターのネックの材質。メイプル、マホガニー、ナトーの違い、特徴では、ギターのネックの材質についてご紹介しました。
今回は、指板(しばん)の材質について見てゆきたいと思います。(※指板(しばん)とは、上の写真の人が持っているパーツのこと)
また、指板によく使われる3つの木材、ローズウッド、メイプル、エボニーの違いやそれぞれの特徴、音の違いなどについてもご紹介してゆきます。
記事の最後には筆者のおすすめの(指板として使う)木材についても書いてみたいと思います。
それでは早速見てゆきましょう!
指板(しばん)とは?
まず、最初に指板(しばん)についてですが、指板はフィンガーボード、フレットボードとも呼ばれますが、ネックの表面に貼られたパーツ(木材)のことを言います。
下の写真が指板(しばん):
拡大すると・・この指板の上に弦が来る形になります。
指を乗せる部分になるので、指板、または、ファインガーボードと言います。
冒頭でも書かせていただきましたが、指板に使われる木材としては、「ローズウッド」、「メイプル」、「エボニー」の3つが最もポピュラー、一般的な木材になります。
この指板に使う木材ですが、音に影響を与えると言われていて、それぞれの木材には音の特徴があります(その点については次で見てゆきます)
指板ですが、塗装されていることが多いメイプルを除くと、ローズウッドもエボニーも基本的には塗装されていません。
つまり、木がむきだしになっているわけですが、そのため、ローズウッド、エボニーの指板は乾燥に敏感で、湿度管理やオイル塗布など、定期的なメンテナンスが重要になってきます。
さて、ここからは、指板に使われる木材としてのローズウッド、メイプル、エボニーのそれぞれの特徴や違いについて見てゆきたいと思います。
ローズウッドの特徴
写真はローズウッドを使った指板。木の表情が見えるような温かみがある赤茶色、焦げ茶色の木材。基本的には無塗装なので、オイル塗布などメンテナンスが必要。
ローズウッドは、エレキギター、アコースティックギターのどちらにも多く使われる木材になります。
赤茶色、焦げ茶色をした温もりを感じる木材で、指板に使われる木材としては非常にポピュラーな木材で、アコースティックギターのサイド、バック材に使用されることも多いです。
【音の特徴など】
ローズウッドの特徴は、何といっても温かみのある音になります。
後ほどご紹介しますが、メイプルに比べると、温かく、ソフトな音が特徴になります。
ただ、その分、アタック感は弱くなります。サスティン(音の伸び)に関しては、エボニーに比べると、少なめです。
また、ローズウッドの場合は、エボニーのような光沢はなく、滑りもそれほどよくはないので、スライドする際など、弾き方によってはエボニーなどと比べると、少し引っかかる感じを受ける人もいるかも知れません。
ローズウッドといっても色々な種類があり、高級ギターなどには、希少価値の高いマダカスカル・ローズウッドやホンジュラス・ローズウッドなどが指板に使われることもあります。
また、以前はブラジル原産のハカランダ(=ブラジリアン・ローズウッド)も指板には使われることがありましたが、輸出規制がかけられてからは、超高級ギターであっても、ハカランダが使われているものは殆ど見ることはなくなりました。
【メンテナンスに関して】
ローズウッドは基本的には無塗装になりますので、乾燥した環境などでは、木材の縮みであったり、割れなどが起こることがあります。
そのため、湿度管理や定期的に指板用のオイル(レモンオイル、オレンジオイル)などを指板に塗布するなど、メンテンナンスが重要になってきます。
ここで簡単にまとめると、ローズウッドは温かく、ソフトな音が特徴。無塗装なので、オイル塗布などメンテナンスが必要です。
メイプルの特徴
写真はメイプルを使った指板。メイプルは指板だけでなく、ネック材としても使われることもあり、ネックと指板が一体になったものもある。
次は、(指板としての)メイプルの特徴を見てゆきましょう。
メイプルは、硬度の高い、白い木材でネックの材としても使われることがある木材になります。
【音の特徴など】
メイプルの特徴は何といっても、クリアではっきりとした音になります。
メイプルはローズウッドに比べると、立ち上がりがよく、アタックの利いた音になると言われています。
ちなみにフェンダーのストラトキャスターにはこのメイプル指板がよく採用されています。
写真はフェンダー ストラトキャスター:
メイプルを指板に使う場合ですが、ネックそのものもメイプルでできている「ワンピース・ネック」と他の指板用の木材と同様に、指板をネックに貼り合わせる「貼りメイプルネック」があります。
一般的には、メイプル指板は塗装されているものが多く、その分、ローズウッドに比べると、メンテンナンスが楽だったり、傷みにくいという特徴があります。
ここで簡単にまとめると、メイプルは、クリアではっきりとした音が特徴。立ち上がりもよく、アタックの利いた音になります。また、メイプル指板は塗装されていることが一般的です。
メイプルとローズウッド指板で音は実際に変わるか?
3つ目の木材、エボニーの前に・・
以前、デジマートが行った、メイプルとローズウッドの指板の音の違いに関する実験があります。
参考:ストラトキャスターのメイプル指板とローズ指板はどれだけ音が違うのか?(https://www.digimart.net/magazine/article/2017040302499.html)
その実験では、同じギター(フェンダージャパン・ストラトキャスター)を使って、ネックのみをメイプル指板のもの、ローズウッド指板のものに交換して音を比較する・・ということが行われたのですが、結果は・・
すぐに違いがわかるほど、両者には音の違いがありました。
メイプルは、クリーンできらびやかな音、ローズウッドは温かみのある音だったのです。
全く同じギター。指板が違うだけでこんなにも音が違うのか・・と驚きました。
エボニーの特徴
写真はエボニーを使った指板。黒っぽい色と光沢が特徴。ローズウッドと同じく基本的には無塗装なので、オイル塗布などのメンテナンスが必要。
さて、少し話がそれましたが、指板に使われる木材の3つ目はエボニーになります。
エボニーは高級ギターに多く使われる木材になりますが、ギターに使われるものはエボニーの木の芯の部分からしか採れないそうで、とても貴重な木材になります。
エボニーの特徴は、色は黒っぽく、光沢があって、音は、メイプルとローズウッドの中間、バランスの取れた音が特徴です。
サスティン(音の伸び)も豊かで、メイプルよりも立ち上がりがよいと言われることもあります。
この木材は非常に硬く、目が細かく、重さがあり、また、滑りがよいのも特徴ではないかなと思います。
そのため(滑りがよいため)、スライドする際などは、弾きやすい、引っかかりが少ないと感じる人もいるかも知れません。
今回ご紹介している3つの指板に使われる木材の中では最も高級な木材になり、エボニーが使われているギターの多くは、各メーカーのラインアップの中でも高級、ハイクラスのギターであることが多いです。
エボニーは、硬さがあるのでローズウッドなどと違って、長く使っていてもすり減りは殆ど見られないことが多いですが、基本的にはローズウッドと同じく無塗装なので、乾燥による、ひび割れなどが見られることもあります。
そのため、ローズウッド同様、湿度管理や指板用オイル(レモンオイル、オレンジオイル)の塗布など定期的なメンテナンスが大事になってきます。
ここで簡単にまとめると、エボニーは、メイプルとローズウッドの中間、バランスのとれた音が特徴。光沢があり、滑りもよいので、弾きやすいと感じる人も。ローズウッド同様、無塗装なので、メンテナンスが重要です。
指板としておすすめの材質は?
さて、ここまでギターの指板の材質について、ローズウッド、メイプル、エボニーのそれぞれの特徴やその違いについて見てきました。
どれもそれぞれの良さがあると思いますので、これがベストな指板ですとは言えないかと思います。
ただ、筆者の個人的なおすすめとしては、エボニーと、それから、エレキギターの場合は、メイプルもおすすめかなと思います。
ギターをはじめたばかりの頃は、ギターに使われる木材にはそれほど興味はなく、また、知識もなかったのですが、ギターを何本か購入してゆくうちに木材が違うだけでこんなに違うのか!と気づくようになりました。
そんな風にして、実際に手で触れてゆく中で感じたことですが、筆者の場合は特にエボニーが好きで、黒っぽく光沢のある見た目や触った時のツルっとした感じもそうなのですが、何より、滑りがいい・・というのが自分にとっては、一番のポイントになっています。
ローズウッドの音色はとても好きなのですが、どうしても、スライドしたりした時に、引っ掛かりを感じてしまうというか。
その点、エボニーは、ツルっと滑ってくれるので、引っかかりを感じることも少なく、スムーズに演奏できる点がとても気に入っています。
音もバランスがとれていると言うか、温かさもありながら、クリアでもあるという、まさに、メイプルとローズウッドの中間という表現がふさわしい音と言いましょうか。
一方、エボニーの欠点としては、エボニーが使われているギターはややお値段が高くなってしまう点でしょうか・・
他の木材や仕様は一緒で、指板がエボニーかローズウッドかの違いで、数万円違う(エボニーの指板のギターの方が高くなる)こともよくあります。
ただ、それでも多少金額が上がったとしても、個人的には、ローズウッドではなく、エボニーを使ったギターを選ぶと思います。